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アルバニア語
超入門
< 第2話 > 形容詞の基礎
アルバニア語の形容詞変化について概説します。
第2話で形容詞を取り上げる理由は、印欧語のなかでも独特な特徴があるためです。
このページの内容
・概要
・3つの主要変化 
・補足的な変化
・不規則変化
§0 概 要
🔖 最大の特徴
名詞を限定するときも形容詞は名詞の後ろに置かれます。多くの形容詞は連結辞と呼ばれる小辞を介して名詞とつながります(詳細は後述します)
※ペルシャ語にも〈エザーフェ〉と呼ばれる連結辞があり、ちょっと似ています。
A. 連結辞を伴形容詞
名詞 ←連結辞+形容詞 
B. 連結辞を伴わない形容詞
名詞 ←形容詞 
(連結辞を伴わない形容詞は少数派です)
他の主な特徴
形容詞本体:名詞の性と数に合わせて語尾が変わります。
 一部で格による変化があります。
連結辞:名詞の性、数、格、さらには「定か不定か(定性)で少し変わります。
🖍 実際にはすべてにおいて変化するわけではなく、単数と複数で同じ形等、不変の場合も多いです。
⚠️ 変化のバリエーションが多いため、以下は代表例としてご覧ください。
§1 基本形
 変化のパターンを見る前に、形容詞変化の典型例を見ておきましょう。不定の主格名詞に〈連結辞あり〉の形容詞が付く場合を想定しています。
不定形の主格名詞に
連結辞ありの形容詞が付く場合
〈典型例〉
男単名詞 ← i +形容詞本体
女単名詞 ← e +形容詞本体
男複名詞 ← +形容詞本体
女複名詞 ← +形容詞本体
 これを典型例として、連結辞形容詞本体定性に応じて変化することになります。
§2 主格と対格
格 アルバニア語の名詞には格変化があります。この節ではウォーミングアップとして〈主格〉と〈対格〉における代表的な形をご紹介します。
 主格:主語や述語
 対格:直接目的語。日本語の「〜を」にほぼ対応
定性 アルバニア語の名詞は〈定性〉を区別します。定冠詞が付いた名詞を〈定形〉、付いていない名詞を〈不定形〉といいます。
 〈定性:定形と不定形〉
定形:定冠詞が付くなど、限定された名詞の形態
不定形:定冠詞などが付いていない、非限定の名詞の形態
icon2-1   不定名詞
修飾する名詞が不定形(定冠詞が付かない形)の場合の例として、「白い本」と「白い家」に対する〈数と格の変化〉を示します。
 形容詞:白い i bardhë
 男性名詞:本 libër
 女性名詞:家 shtëpi
 ⚠️ §0の最後にも書きましたが、名詞と形容詞の変化はバリエーションが多いため、以下は代表例としてご覧ください。
〈形容詞の変化例——不定、主格・対格〉
男「白い本」女「白い家」
単主libër i bardhështëpi e bardhë
単対libër bardhështëpi bardhë
(↑単数の主・対格は男女とも連結辞のみ変化)
複主libra bardhështëpi bardha
複対(同上)(同上)
(↑複数の主・対格は同形、女性形は-a)
不定形名詞に付くときの例
結合辞:
 男/単/主が i、女/単/主が e 
 それ以外は
形容詞本体:
 主格と対格は同形
 女性形で語尾変化
(男性と同形の場合あり)
〈連結辞を伴わない形容詞〉については§2-3でまとめて述べることにします。
icon2-2   定名詞
修飾する名詞が定形(定冠詞が付く形)の場合について、上と同様に「白い本」と「白い家」に対する〈数と格の変化〉を示します。
〈形容詞の変化例——定、主格・対格〉
男「白い本」女「白い家」
単主libri i bardhështëpia e bardhë
単対librin e bardhështëpinë e bardhë
(↑単数の主・対格は男女とも連結辞のみ変化)
複主librat e bardhështëpitë e bardha
複対(同上)(同上)
(↑複数の主・対格は同形、女性形は-a)
定形名詞に付くときの例
結合辞:
 男/単/主は i、それ以外は e 
形容詞本体:
 主格と対格は同形
 女性形で語尾変化
(男性と同形の場合あり)
icon2-3   連結辞なし
§2-1と§2-2では〈連結辞を伴う形容詞〉の主格と対格についてまとめました。この節では〈連結辞を伴わない形容詞〉の主格と対格についてまとめます。
 基本的な変化は以下の2つです。
 なお、連結辞がないため格と定性については不変で、性数のみ変化します。
連結辞なしの形容詞
連結辞なし
形容詞本体:
 ① 女性は単数と複数で -e
 ② 上に加え、男性の複数形は -ë
 ③ 一部に不変化のものもあります 
 ④ 上記以外 
次の節では主格と対格以外の格をざっと見たあと、変化のバリエーションについて少し触れたいと思います。
§3 形容詞の変化(主要変化)
🔖 斜格
 形容詞の格変化を説明するにあたっては、名詞の格について一通り説明するのが筋ですが、形容詞の格変化は主格と対格を除いた3つの格は同形であるため、ここではこれを斜格と総称して細かい説明は省略します。
以下に、代表的な変化パターンを3つ示します。
icon3-1   代表変化1
  -ë, -l, -r, -t で終わる形容詞、分詞から派生する形容詞
複数女性が -a の語尾を持ち、それ以外は不変
連結辞が適宜変化する
「白い」の変化形を示します。
〈不定形〉
男性女性
単主i bardhëe bardhë
単対 bardhë bardhë
単斜 bardhë bardhë
複全 bardhë bardha
〈定形〉
男性女性
単主i bardhëe bardhë
単対e bardhëe bardhë
単斜 bardhë bardhë
複主e bardhëe bardha
複対(同上)(同上)
複斜 bardhë bardha
アイコンメモ〈語尾 a の付け方〉
子音で終わる形容詞→ そのままaを付けます
-ë で終わる形容詞→ -ë をaに変えます
 (例:zënë/zëna
-ël, -ër で終わる形容詞→ -ë を落としてaを付けます
 (例:-bël/-bla
icon3-2   代表変化2
  語末が -m, -q, -sh の形容詞、分詞から派生する -ës, -s の形容詞
女性は単数と複数ともに -e の語尾を持つ。格による変化もない。
「好ましい/këndshëm」の変化形を示します。
〈不定形〉
男性女性
単主i këndshëme këndshme
単対 këndshëm këndshme
単斜(同上)(同上)
複全 këndshëm këndshme
〈定形〉
男性女性
単主i këndshëme këndshme
単対e këndshëme këndshme
単斜 këndshëm këndshme
複主e këndshëme këndshme
複対(同上)(同上)
複斜 këndshëm këndshme
アイコンメモ:〈語尾 e の付け方〉
-ë で終わる形容詞→ -ë をeに変えます
 (例:tejmë/tejme
-ëm などで終わる形容詞→ -ë を落としてeを付けます
 (例:këndshëm/këndshme
icon3-3   代表変化3
  名詞から派生した、語末が -ar, -tar, -ik, -ist, -iv, -or, -tor などの形容詞
女性は単数と複数ともに -e、男性複数は -ë。格変化はない。
一般に連結辞を伴わない
男性女性
単全absolutabsolute
複全absolutëabsolute
icon3-4   複合形容詞
 [何らかの要素+形容詞]で構成される複合形容詞は、基本的に形容詞部分の変化に従います。
§4 形容詞の変化(補足)
上記§2では、代表的な3つの変化パターンを示しました。以下では、ややマイナーな変化パターンと7つの不規則変化を紹介します。
icon4-1   変化形4
  語末が -çi, -li, -xhi の形容詞
 代表例
男性女性
単全qejfliqejfleshë
複全qejflinjqejflesha
icon4-2   不規則変化
iconkeq(悪い)
男性女性
i keqe keq
këqij këqija
iconlig(邪悪な、病気の)
男性女性
i lige ligë 
lig lig
iconmadh(大きい)
男性女性
i madhe madh
mëdhenj mëdha
iconri(若い)
男性女性
i rie re
rinj reja
icontjetër(他の)
男性女性
tjetërtjetër
tje tjera
※単数形は連結辞が付かないようです。
iconve(未亡人の)
男性女性
i vee ve
ve veja
iconvogël(小さい)
男性女性
i vogële vogël
vogjël vogla
iconzi(黒い)
男性女性
i zie zezë
zinj zeza
icon4-3   不変化
 形容詞のなかには形容詞本体が変化しないものもあるようです。詳しいことは私もよくわからないため割愛します。
〈最後に〉
 いかがでしたか。アルバニア語は語形の変化が全体的に多様ですが、形容詞はとくに類型化しづらいように思います。ここでは3つの主要変化と1つの補足的変化、そして不規則変化を取り上げました。学習の一助になれば幸いです。
〈出典・参考〉表示する非表示
初版:2022.1.04